2024年よりお札の肖像画に使われる人物が変更されると発表がありましたね。

 

新しくお札に描かれるのは北里柴三郎・津田梅子・渋沢栄一の3人です。

 

福沢諭吉なんかはもう30年以上も1万円札の人だったので、そう考えると少し寂しいかもしれませんね。

 

ですがこの新たな3人は、いったいどのような基準で選ばれたのでしょうか。

 

紙幣に人物が描かれるのは明治時代から

紙幣に人物の肖像画が描かれるようになったのは、明治時代のことです。

 

この時はまだ紙幣制度が整っておらず、特に江戸時代なんかは幕府が発行したや、各藩で独自に「藩札」が発行したりしていて、すごくごちゃまぜでした。

 

そういった状況を整備するために、まずは明治通宝という紙幣を発行。

 

ただこの明治通宝は破れやすいうえに偽造されやすい低品質なものだったので、政府は日本最高の印刷技術を使って改造紙幣を発行し、これを流通させました。

 

そしてこの改造紙幣には神功皇后(じんぐうこうごう)が描かれており、これが日本で初めて紙幣に人物が描かれた例だといいます。

 

 

神功皇后は14代天皇・仲哀天皇の妃です。

 

仲哀天皇は、熊襲(くまそ・九州南部の反天皇勢力)征伐に尽力した人物です。

 

志半ばで崩御となったものの、神功皇后がその遺志を継ぎ、三韓(新羅・百済・高麗)征伐を達成したと伝えられています。

 

ただ仲哀天皇と共に、実在するかどうかは分かっていない、いまだ謎多き人物なんですよね。

 

実際に紙幣に描かれたときも、どちらかといえば西洋人風の人物が描かれていました。

 

 

(紙幣のデザインをイタリアのエドアルド・キヨッソーネに依頼したことも影響している)

 

 

数々の人物が紙幣に起用

この神功皇后以降も、数々の人物が紙幣モデルに起用されました。

 

板垣退助

菅原道真

和気清麻呂

武内宿禰(たけしうちのすくね)

藤原鎌足

聖徳太子

日本武尊

二宮尊徳

岩倉具視

高橋是清

伊藤博文

福沢諭吉

新渡戸稲造

夏目漱石

野口英世

樋口一葉

 

 

などなど。

 

(2000円札の紫式部は除く)

 

下の方に行くほど記憶が新しくなりますね。

 

現在の野口英世・樋口一葉・福沢諭吉の3人になったのは2004年から。

 

それ以前の夏目漱石・新渡戸稲造・福沢諭吉の3人になったのは1984年からになります。

 

つまり福沢諭吉はもう35年もの間、1万円札の人なのですね。

 

新札になるのは2024年からなので、40年もその役割を全うすることになります。

 

お札に選ばれる人物の基準は?

 

では紙幣に選ばれる人物には、いったいどういった基準があるのでしょうか。

 

基準として公表されているのは

 

・日本国民が世界に誇れる人物

・一般的によく知られている人物

・偽造防止の面からなるべく精密な人物像の写真や絵画を入手できる人物

 

の3点。

 

なんだか結構曖昧なんですね。

 

ですが新たな3人を見てみると、きちんと条件は満たしているかと思います。

 

 

新1000円札に描かれる北里柴三郎は、ペスト菌の発見・破傷風の研究などで感染医学に大きく貢献しました。

 

 

またヨーロッパで流行したジフテレイアの研究でも功績を残していて、世界的な評価も高いです。

 

ちなみに野口英世の師匠的な存在でもあります。

 

 

新5000円札の津田梅子も、なんといっても津田塾大学の創設者として有名ですね。

 

 

父が北海道開拓使で、開拓使次長だった黒田清隆が女子留学生を募集していると聞くとすぐさま梅子を送り出し、日本初の女子留学生となりました。

 

6歳から17歳までの青春時代をアメリカで過ごし、当時日本では当たり前だった男尊女卑の価値観を変えるべく奮闘。

 

女性が学問を学び、社会に進出するための礎を築き上げた人物なのです。

 

 

そして新10000円札の渋沢栄一は、日本で初めての銀行を設立した実業家として知られています。

 

 

第15代将軍・徳川慶喜の側近として使え、1867年に行われたパリ万博に同行。そのままヨーロッパ諸国を視察し、その文化に衝撃を受けました

 

その後、フランスで学んだ株式会社制度を実践すべく、1869年に商法会所を設立

 

同年には大隈重信から高い評価を受けて、大蔵省に入省し、国立銀行条例の制定や第一国立銀行設立の指導に当たりました。

 

大蔵省を退官後には、第一国立銀行の頭取に就任。以降も実業家として、その名を歴史に残しました。

 

 

いずれもお札に選ばれるには相応しい人物なのではないでしょうか。

 

公表されていない基準もある!

ちなみに3つの条件の中で、意外と大事なのが「なるべく精密な人物像の写真や絵画を入手できる」という点です。

 

特に顔に特徴がある人物であればなお良いといわれています。

 

福沢諭吉なんかはきれいな肖像画が残っているうえに、その肖像画の顔にシワが多かったため、それだけで偽造防止につながっていたといいます。

 

 

加えて、1984年にあたらしいお札を発行する際に、「文化人」から選ぶという基準も増えたそうです。

 

それまでは政治家からも選ばれていたのですが、昭和の激動の時代が進むにつれて、「政治家+お金」のイメージが悪くなってきたことが影響しているのでしょう。

 

また5000円札は樋口一葉→津田梅子と女性が続いているので、今後は女性が続いていくかと思います。

 

あとがき

新しくお札に描かれる人物については、わりと曖昧な基準みたいです。

 

教科書に載るような、だれもが知っている人物であるのはもちろん、精密な写真や肖像画が残っていて…加えて顔に特徴があればなお良し。

 

いまは5000円札に女性が起用されるので、5000円札に限っては顔の特徴は条件から外されていると思いますが。